大人のための子どもの本の読書会

向島こひつじ書房が主宰する読書会ブログ

第12回読書会報告『銀河鉄道の夜』をめぐるカルチャーたち

さすがに長年読み継がれてきた日本の作品だけあって、さまざまな本が集まりました。その中から、おすすめのものを紹介します。

迷ったらまずこの一冊。文庫の定番。インターネットなどない時代から地道に原本にあたって賢治研究をしてきた天沢退二郎さんの解説付き。各賢治作品の時代背景なども書かれているので、作品を理解する手助けになる一冊です。

次の3冊は、賢治に思い入れのある画業の人たちが、その言語世界を読み込み、ビジュアル化した完成度の高い作品集です。絵を生み出す力を内在していることは、賢治作品の特徴かもしれません。

1979年からパロル舎より刊行されている【画本宮沢賢治】シリーズをライフワークとする画家・小林敏也自身選により再構成。賢治カラーとも言える、鈍色の青を基調にした装丁です。こひつじが賢治作品をあらためて手にするようになったきっかけは、小林さんの画本シリーズによるところが大きく、個人的に思い入れのある一冊です。

漫画家の永島慎二が、構想20年をかけて描いたオールカラーの描き下ろし。

映画にもなった作品です。東北出身のますむらひろしが描いた賢治の世界の主人公たちはなんと猫! DVD化された映画もおすすめです。

次の2冊は、賢治の世界をよりよく知るための手がかりとしておすすめです。人生の歩みの中で、そのときどきに賢治を追い続けてきた2人による、賢治世界の核心を読み解く本。

NHKテレビテキスト「100分de名著」の保存版。芝居の演出、映画脚本の執筆など多方面で活躍する著者は、1967年の来日以来、賢治を探求し続けてきました。『銀河鉄道の夜』だけでも5回も翻訳出版しています。
Night On The Milky Way Train -Chapter 1-ここで英訳の冒頭を少し体験できます。英訳に挑戦するならば、ペーパーバックよりこちらが入りやすそうです。

同じく、青年期から生涯を通じて宮沢賢治に関心を寄せ続けてきた詩人・評論家の吉本隆明。戦後日本の言論界を代表する思索の人が、宮沢賢治について語り続けてきた30年超に及ぶ講演会の全収録です。語り言葉を文字化したものなので、明快で読みやすく賢治作品の根の部分を知りたい人には絶好の書です。賢治が最も大切なものとした信仰と各作品との結びつきについての考察や、賢治作品に描かれるいじめの問題について、こひつじは特に興味深く読みました。

まだまだあります、カルチャーへの影響。参加者の方々に教えていただきました。
まずは、ラーメンズのコント『銀河鉄道の夜のような夜』
そして、銀杏ボーイズの『銀河鉄道の夜』。歌詞には高円寺や東北やシベリア鉄道も登場。大学生男子が教えてくれました。銀杏ボーイズはテレビには出ませんが、高校生や大学生から絶大な支持を受けているそうですね。ボーカルの人くらいは、俳優さんとしてこひつじもなんとか知ってました。


賢治は根強い人気があるのか、いつになく初参加が増えました。大学生から子どもに読み聞かせをしているママまで、幅広い層が集まりました。男子も2名。


古民家の雰囲気に合わせて、冷やしデザートセット。あんみつ、杏仁豆腐と沖縄の黒みつ付き。墨田区東向島にある和菓子屋「一哲」さんのこの夏の人気商品です。こすみ図書が入れてくれたリンゴフレーバーの冷煎茶と合わせました。