大人のための子どもの本の読書会

向島こひつじ書房が主宰する読書会ブログ

読書会報告『みどりのゆび』で平和の花を咲かせたい!

朝夕に秋の風吹く季節となりました。夏の終わりに開かれた読書会のご報告を、いまさらながらと慌てて書いています。

今回はすみだのはしっこ、こすみ図書で行われました。夏となればシースルーな扉を開け放つこすみ図書にも、近代化の波が! ついにクーラーが設置され、なんと初始動の日でした。いつにもまして快適な空間で、熱く語り合う2時間となりました。

みどりのゆび (岩波少年文庫)

みどりのゆび (岩波少年文庫)

さて、みなさんは『みどりのゆび』をご存知でしょうか? 恥ずかしながらこひつじは、図書館で昔から背表紙が気になりながらも、通り過ぎてきた本でした。タイトルは見知っているのに、中身となるとまったく知らない。そうして、読んでみると、あらまったく想像と違ったわ、という本がときどきありますよね。まさにこの『みどりのゆび』がその手の一冊でした。今回、ぐりのりさんに紹介していただき、読む機会が与えられたことは幸せでした。自分ひとりではめぐり会えなかった本との新しい邂逅。これぞ読書会の醍醐味のひとつだと思います。

岩波書店の『みどりのゆび』愛蔵版です。カラーのイラストをふんだんに使い、今ではあまり見られない布張りの装丁が愛らしい。課題図書の言い出しっぺであるぐりのりさんが持ってきて下さいました。このたたずまいに惚れて、関心を持ったのが『みどりのゆび』を好きになるきっかけだったとか。一同、わかる、わかる。最初にこの本に出会っていれば、興味の持ち方が違っていたのだと思います。版元の心意気が伝わる装丁です。

みどりのゆび

みどりのゆび


左が愛蔵版。右が岩波書店の単行本で、今回は全員こちらを持参。中のイラストはすべてモノクロです。児童書とイラストは切り離せない仲ですが、この本もまさに幸せなコラボの結実。ジャクリーヌ・デュエームという画家の作です。著者のモーリス・デュリオンは、『大家族』という小説でフランスのゴングール賞を受賞した国民的作家であり、政治の世界でも活躍したそうです。生涯でただ一冊書いた子どもの本がこの『みどりのゆび』です。第二次世界大戦中、フランスにおけるナチスの台頭といった戦争の矛盾と悲惨を体験したデュリオンの背景から生まれたようです。

愛蔵版の少年チト。原題のフランス語を直訳すると『チト、みどりのゆび』となります。主人公のチトには特別な賜物が与えられていました。それは〈みどりのおやゆび〉です。チトがおやゆびで目に見えない種に触れると、たちどころに宿った命が目覚め、花をつけます。チトはその才を使って、刑務所、貧困地域や病室と、社会から打ち捨てられたような場所に次々と花を咲かせてそこにいる人々の心をも蘇らせます。表紙のおじいさんは、チトの園芸の師匠です。それを知るまで、この表紙が少し怖く感じられました。どうも、これが敬遠してきた理由のひとつかもしれません。美しい挿絵の多い本でありながら、この絵をあえて選ぶところがフランスのエスプリなのかもしれませんけれど。そう言えば、こひつじの教会の棚に『チトスみどりのゆび』というビデオがあります。手塚治虫制作のオリジナルアニメだとばかり思っていましたが、原作がこの本だったのですね。それとは知らず、読む前に観ていました。『火の鳥』を描いたオサムシ先生らしいこれまた心意気を感じます。












ぐりのりさんが、デュエームの絵の魅力を紹介して下さいました。これは『つきのオペラ』という絵本の見開き場面です。なんと美しい!

つきのオペラ (至光社国際版絵本)

つきのオペラ (至光社国際版絵本)

今回はぐりのりさんにお願いして、この本や著者について少し調べてきていただきました。『みどりのゆび』は全体的な雰囲気が『星の王子さま』に通じるところがあるという意見が参加者から聞かれました。一般的な日本の子どもにとって、フランスの児童文学に触れる機会と言えば、いまだに『星の王子さま』くらいではないかと思います。私たちがその物差ししか持っていないにしても
これまで取り上げてきたアメリカやイギリスの児童文学とは何かが違うのを感じました。子ども向けに書かれているというより、子どもも読めるという書き方だからかもしれません。『みどりのゆび』は、文明がいかに進もうとも、戦争はなくならず、かえって地球上の矛盾や問題が複雑かつ深刻化し続ける今だからこそ、大人にも読み伝えたい本だと感じました。私たち人間に必要なのは、原発というエネルギーでなく、植物。草であり花であり・・・。チトの心に耳を澄ませてみたいと思います。

フランス児童文学への招待

フランス児童文学への招待

フランス児童文学入門書の決定版だとアマゾンの説明にあります。ふだんは図書館司書をしておられるぐりのりさんに教えていただきました。これは便利。

新しい試みとして、最後に本屋さんのポップ作りをしてみました。もしも自分が書店員ならば、どんなことばでおすすめするか?
いやー、難しかった。でも、みんなだんだんと本気、濃い時間を体験しました。これ、楽しいです。イラストや短文など、みなさんの隠れた才に触れることができて、面白かった! いやはや、こひつじは長文タイプなので、コピー文はだめだめ。

熱中したあまり、また読書会風景の撮影を忘れてしまいました。顔見知りが増えて、始終なごやか。すてき女子会風に磨きが。たくさんのご参加をありがとうございました。これは会が終わり、お別れの様子です。この後、墨東まち見世関連のイベントがあり、参加できる方たちはそちらにご一緒しました。












Recipe♯8 高原風みどりのお茶会

「みどり」尽くし。ぐりのりさんが、信州のルバーブで作った自家製ジャムをおすそ分け。冷煎茶は軽井沢の巨大スーパー・ツルヤオリジナルの農家の荒茶を使用。濃くておいしい。そして、こすみ図書と言えばゼリーです。今回は涼しげな夏の高原風なお茶会!?



次回は、10月27日(土) 墨東まち見世参加企画「ウクレレ絵本カフェ」において、公開読書会をいたします。絵本を持ち寄って紹介し合っては自由におしゃべり。絵本尽くしの一日を考えています。おおぐり図書さんによる絵本のセレクトもお楽しみに。詳細はこのブログとツイッターでお知らせします。